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Vingtaine


 

「すみません、今日はちょっと”らっきょ”なんです(笑)」

ついさっきまで、におい立つような色気を放っていたかと思えば、今はもう、ちょっぴり照れながら目を伏せて、人なつっこい笑顔を浮かべている。無邪気でほがらかで、でも、冷静で、何事に対しても自分の視点でしっかりと向き合っている。そんな成宮寛貴、今年で25歳。

・・・で、「らっきょ」っていったいなんのこと?
「昨日、髪を切ったんですよ。そしたら短くなりすぎて、らっきょみたいになっちゃった(笑)。本当は坊主頭にしたかったんですけどね。というのも、女役を演じるっていうことに、昔よりも違和感があって」

2004年夏に上演された蜷川幸雄による舞台『お気に召すまま』。キャストがすべて男性俳優のみという演出で話題を集めたシェイクスピアの恋愛喜劇が、この7月に待望の再演を迎える。成宮さんは初演時、主人公の男性に恋焦がれる”男装の麗人”という複雑なキャラクターを見事に好演。きっと今回も、気品にあふれつつも茶目っ気たっぷりのチャーミングなヒロイン像で私たちを魅了してくれるに違いない。ただ、役に対する彼自身のアプローチは、前回とは若干異なっているようだ。

「昔は、男と女って、そんなに差がないような気がしてたんですよ。もちろん、体のつくりは違うけど、精神的な部分では。でも、今は男と女って違うなあと思ってて。自分は女役をやるんだってことを明確に意識するために、髪を切りたくなったんです。坊主はさすがに仕事が減りそうなのでやめたけど(笑)、なんか、この2年くらいで男性ホルモンがやけに増えた気がするんですよね」

「その証拠に、最近、毛深くなってきた(笑)」と冗談半分で笑う成宮さんだが、考え方の面でも男っぽくなってきたそうで。

「たとえば、男は一生働いて、家を守っていかなければならない、っていう”男の責任”みたいなものについてよく考えるようになりましたね。男女を問わず年上の友達が多くて、みんな30歳前後だったりするから、そこで影響を受けてるところもあるのかもしれない。でも、周りを見ていると男のほうがガキでやんちゃだし、ずっと青春を感じていられるのかなとも思う。いい大人なのに、リアクションが子供のまんまだったりして(笑)」

では、ヴァンテーヌ世代はどうだろう。20代後半の女性の印象を尋ねると、
「結婚という言葉をすごく意識させられているのかなあ、という感じ」
との答えが返ってきた。う〜ん、鋭い。さらに、ハッとさせられるこんな分析も。

「ここで1回悩む、というタイミングなんでしょうね。仕事に生きるか、結婚して子供を産むか。ただ、前に父親役をやって思ったのは、結婚っていうのは、自分最優先でいられなくなる瞬間だと思うんです。それが自分にとってどうなのかということだから、いいも悪いもないし、自分の基準で決めるものだと思います」

舞台に立つときに必ず心がけているのは、「ステージを自分の気で満たす」こと。
「人間がもってるエネルギーってすごくて、舞台に立っていると、お客さんの観ようとするパワーが重力みたいにかかってくるんです。だから、こっちもそれを押しのけるくらいのエネルギーを出さないと倒れちゃう。その、毛穴からエネルギーを出す感覚というか、自分でこの場を満たさなきゃならないんだっていうのは、初めて舞台をやったときに気づいたこと。今でもそこだけは崩さないようにしてますね」

そんなふうに、自分の感覚でとらえたものを信じて行動するところは昔から変わらない。頭で考えすぎると止まってしまうから、あえて考えないようにしたり、わざと見えないフリをしたりすることもある。

「立ち止まってる時間がもったいないと思っちゃうんです。そもそも、役者の仕事って不規則だし、拘束時間が長いから、体力的に多少無理してでもプライベートの予定を入れていかないと何もできなくなってしまう気がする。仕事から帰ってきて、即座にシャワーを浴びてそのまま寝て、翌朝起きてまたすぐに仕事っていう生活パターンにもなりかねない。ただ、時期によっては、そうあるべきときもあるんですけどね。街のにおいが自分の体に染み込まないほうがいいときもあるんです」

たとえば、ドラマ『いま、会いにゆきます』の主人公を演じたときは「夜中に友達と飲んで盛り上がっちゃったりすると、役に入りづらくなってしまうから」と、意識的に仕事中心の生活にスイッチしたという。時代ものを演じるときも、そう。

「当時の不便さを自分のなかに落とし込むときに、今の社会の便利さがじゃまになってしまうこともあるんですよ。今では電話で簡単に待ち合わせできるけど、昔は『このときに会えなかったら、次はいつ会えるんだろう?』っていうのが当たり前の世の中。別れ際も明るく『またね』じゃ済まなくて、それこそ、泣きながら手を振るような。その感覚を間違えないようにするために、日常の行動を制限することはありますね」

そういった時期を除けば、仕事が終わったあとも飲みに行ったり、友達を家に招いたりと予定はいつもパツパツで、何もせずにボーッと過ごしていることはまずないのだそう。

「・・・いや、考えてみたらありました(笑)。公園に掛け布団を持っていくんです、イチゴ柄の(笑)。それを敷いて、友達とお酒やスナック菓子を片手にボーッと。でも、そういうときくらいかな」

次にまとまった休みがとれたら、夏休み前の小学生のようにきちんと計画表を作ってから(!)過ごすつもりなのだとか。

「休みの間にやっておきたい作業があるんですよ。興味があることを新しく始めるには、下調べをしたり人脈を広げたり、いろいろと準備が必要じゃないですか。チャンスがきたときにうまくのっかれるように、自分のなかで備えておきたいんです」

ご自身曰く、
「前借り人生。お金以外は(笑)」
まるでクロールで水を掻くように未来という時間を今に引き寄せては取り込んでいるのだけれど、そこに焦燥感はまったくなく、むしろ慎重。なのに、いつだって軽やか。彼の大好きな仲間たちのように、彼もまた、「ガキでやんちゃで、青春」な輝きをもつ大人の男なのだ。


写真:4ページ中、3枚(その内の1枚は2ページに渡る)
全体的に淡〜い感じの写真で、色気と爽やかさ両方が感じられました。



発売日:2007/6/12、 REPO:6/14

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