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レプリークBis Vol,8


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阪急コミュニケーションズ 2007-06-25
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あれから3年━。

ナリ「初演が終わったときに、僕は『またやりたい!』 ってすぐに言ってたんです。それがやっと叶ったんですけど」

小栗「だけど、3年ぶりとなると、今さら感も多少あって(笑)」

ナリ「そうなんだよね。あれからずいぶん経ったので、あのときのままの”やりたい”じゃなくて、ちょっと変化していて。前回は、ビジュアルとかを含めて若さで乗り切ったみたいな感じだったけど、それがどう変わるのか・・・。特に女役の僕は、あれから男性ホルモンもずいぶん出てきちゃったので(笑)、今のこの自分に、どういうふうにロザリンドを入れればいいのかなって。そこは前よりもハードルが高いような気がしてるんだよね。」

小栗「パッと見は、おれより男っぽくなってるからね(笑)」

ナリ「でしょ(笑)。だから、前回でもすごくたいへんだったのにって」

小栗「”お気に召すまま”をやってすごく印象に残ってることといえば、吉田鋼太郎さんと仲よくなったこと(笑)、ナリが蜷川さんにムチャクチャ揉まれてたことなんですよ。なんか”登校拒否になっちゃうんじゃないか、ナリくん”って思うぐらいたいへんそうだった。だから、おれも稽古場ではあえて不機嫌そうな顔してたと思うんだけど」

ナリ「小栗がどんな顔してたとか、僕、全然覚えてない(笑)」

小栗「それだけ必死だったんだと思うよ。でも、本番が始まってから、ナリはどんどんきれいになってましたよね。ウダウダやってた僕はあっという間に飛び越されちゃった(笑)」

ナリ「たぶん、本番に入ったときに”とにかくやらなきゃいかん!”って感じになったと思うんだよね。稽古中はまとまりがつかなかったんだけど、たとえば蜷川さんがそこにこだわってるのはわかるけど、なんでこの言い回しがいけないのかわからないとか、自分でも自分なりにこのほうがいいかなとか、やりたいことがたくさんあって。でも、1回立ち止まるというか、今あるものを見せるっていうふうに切り替えなくちゃいけなかったから。そしたら急に、自分の中にストンと落ちたんだよね。で、そこから毎日毎日進化していって、お客さんに受けるとどんどん楽しくなっていって」

小栗「それが喜劇の怖いところでもあるんだけど」

ナリ「うん。だから、小栗とふたり楽屋裏で”ここはこうだよね”って確かめ合ったりして。なんかふたりでガマンごっこしてるみたいな感じだった」

小栗「演劇ってたぶん、蓋を開けたらそこからは自分らのものになっていくし、よくするのも悪くするのも自分らしだいだと思うんですよ。だから、ヘンなところで加速するとすごく見苦しいものになるので、それだけは気をつけなきゃいけないなと思っていて」

ナリ「そう。おれらが前回めざしてたのは、シンプルな笑いだったんです。現代的なものを入れ込むといっても、お客さんに媚びて風俗的にしていくのではなくてね、一生懸命な姿が滑稽に見えるっていう。そこがこの本の人間臭くて面白い部分だし。だから、そこをもう1回フィーチャーして蜷川さんと作っていきたいなって。3年前の気持ちを取り戻すとしたら、その部分を大切にしたいなって思いました。それにこの作品、ロザリンドが男装してオーランドーを試すとか、話自体がファンキーだし」

小栗「遊び道具がいっぱいあるからね。わざわざ自分たちで飛ばす必要はないなっていう。ホントこれ、イカれた話だと思うよ。昨日、半身浴しながら久しぶりに全部読んだんだけど、ひと目見たら惚れちゃって、惚れたら求婚して、求婚したら相手がOKして、本当にそんなことがあり得るのかっていう、ぶっ壊れた話だなと思ったもん。おれの役なんかも、恋の病にかかってバカみたいになってる男の子っていう感じで(笑)」

ナリ「で、小栗がどれだけ恋焦がれてくれるかによって、僕も女としての小悪魔さを出せるみたいな(笑)。ただ、それも好きな人の気持ちを確かめたい一心でやってることだし、その天使と悪魔の使い分けを魅力的に見せることが、すごく大事なんじゃないかな」


古典とのつきあい方。

小栗「この3年間に、ナリは舞台を4本やってるよね」

ナリ「うん。”マダム・メルヴィル”に・・・」

小栗「”浪人街””KITCHEN””魔界転生”。すげぇ!おれ、ナリのこと、超詳しいじゃん(笑)」

ナリ「僕も小栗のはちゃんとチェックしてるよ(笑)。でも、その小栗のを含めて、シェイクスピア作品を観ていて改めて思ったのは、あのふだん使わないような言葉を使って気持ちを表現していくのは難しいけど、それを自分のものにしていくのが面白いのかもしれないっていうこと。”魔界転生”で天草四郎をやったときも、大河ドラマをやったときも思ったんだけど、あえて昔の言葉を楽しむっていうか」

小栗「そうすると、どんな台詞でも言えるようになるしね。芝居ってどういう作り方がいいのかわからないけど、役者さんが自分で台詞を変える場合もあるじゃない。でも、ドラマでもなんでもおれは、脚本家さんが考えて作った台詞なんだから、腑に落ちなくてもまず言ってみようよと思うタイプで、そのときに言えない台詞がなくなるんだよね」

ナリ「だから、古典をやったあとに連ドラとかに入ると、高山で走ったあとに平地でマラソンするみたいな感覚になるというか(笑)。でも、結局は同じマラソンで。時代が違うから環境とか時間の流れ方は違うんだけど、人が人と出会って生まれる気持ちっていうのはそんなに変わってない。それはね、いろんな作品を演じてみて思います」

小栗「そういう意味では、シェイクスピアって崇高に思うことも、おれの中では最近、よくわからなくなってきたんだよね。確かに初めはビビッてたけど、実はそうでもないんじゃないか、って(笑)。だって、掘り下げたら辻褄が合わない部分がいっぱいあるし。そもそもシェイクスピアも座付き作家だったから、大衆に受けるものを作ってきたと思うんだよね。当時の世論に対してこういう批判をしたら面白いだろう的なことも入れてたと思うし。そうすると、この唐突な台詞はきっと、1回公演してみてちょっと違うなと思ったから書き換えたんだろうなとか(笑)、そういう裏も見えてきて。だったら自分もそんなに堅苦しく考えずにやって、演出家が崇高なものにしたいのであればそう作っていけばいいし、下世話なものにしたいんだったらそっちへ行けばいいんだっていう。だから今は、ほかの芝居をやるのと同じ気持ちでやろうと思ってるんだけど」

ナリ「確かにそうだね。ただ、現代劇と比べると、古典ってものすごくドラマチックだなと思うから。もっと華やかで、もっと強欲で。だから、自分の中にある全部を出さないとそれを表現しきれなかったり、ちょっと台詞に負けちゃったりするなとは思う」


リスペクト&リベンジ。

小栗「舞台っていうと、ましてやシェイクスピアっていうと敬遠する役者さんも多いみたいなんだけど、やらないよりはやったほうが絶対にいいと思うよね」

ナリ「うん。このアンリアルなものをどうリアルに見せていくか。それは難解なことだけど、すごく面白い」

小栗「それこそふつうのリアルな芝居もシェイクスピアもやれば、できることがいっぱい膨らむのに、って思うんだけど。だから蜷川さんも、やりたいという思いがある人にはやれる環境を作りたいって考えてるんじゃないかな。様式的なこととか、見せるってこととか、ホントにいろんなことを教えてくれるし」

ナリ「だから、シェイクスピアをやるっていうこと以上に、蜷川さんと仕事することが大事なことのような気がしてるんだよね。たまにパワーが強すぎるなと思うことはあるんだけど(笑)」

小栗「計り知れないパワーだよね(笑)。たかだか10年ぐらいしかやってきてないおれらだって山ほどツラいことがあるのに、それを何十年も続けてきてちゃんと第一線に立ってるんだから」

ナリ「ずっと闘ってきたんだなっていう感じがするよね。その反骨精神がすごいと思うし、歯向かうだけの努力をして、いっぱい栄養をもってる人だから、ついていきたいと思うし。だから僕は、あのパワーに萎縮せず、もう少し強く自分を存在させる精神力をもって、稽古に臨みたいなと思っていて」

小栗「”タイタス〜”のときの稽古初日も怖かったんだよ。顔合わせと本読みの予定だったのに、いきなり立ち稽古が始まって。今回もたぶん追い込んでくると思う(笑)。しかも、3年経っての再演だからね。前と同じような芝居してたら、進歩ないなって話だし」

ナリ「そのまま同じことをやるんだったら、やっぱり意味がないよね。同じようにはできないだろうし。だから、3年前とはちょっと違う気持ちで取り組みたいなと思います」

小栗「蜷川さんだって絶対に変えてくると思うよ。”もう見飽きた”とか言って(笑)。ただ、”おれはこんなにたいへんなことやってます”ってことを見せるのが仕事ではないから、皆さんには娯楽として自由に観てもらえればと思うんですね」

ナリ「こんなにハッピーなお話はないしね、本当にシェイクスピアを身近に感じてもらえる作品だと思います」

小栗「そうだ。”恋におちたシェイクスピア”っていう映画を見てから来れば、シェイクスピアの固定観念みたいなもの捨てられるんじゃないかな」

ナリ「あとは僕たちが、この本の面白さを大切に演じますので」

小栗「うん。おれらは役者ですから、役をしっかりやるだけです」

全8ページ、そのうちナリは4ページ
写真:6枚(表紙別)


発売日:2007/6/25、 REPO:6/26
※本記事内の写真画像の無断転載を禁止します



    


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