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レプリーク vol.51


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As You Like It
『お気に召すまま』が、400年前と現在を賭けぬける
男装する女性。しかも誰もその変装に気がつかず。
そんな設定の面白さをとことん突きつめた喜劇が、
16世紀最後の年、巨人のペンからこぼれ落ちた。
女優が禁じられていた時代、初演は男優のみで。
そのスタイルを意識しつつ、世界から注目される演出家が放った白羽の矢は、
旧知のふたりの人気者のもとに。不思議な恋のゆくえはいかに。

雑誌でこういう撮影をするのは、けっこう楽しいですね。
撮影中は、自分のなかでイメージを作ってます。
ちょっと弱い感じとか、強い感じとか、悲しい感じとか。
そうすると勝手にストーリーができてきて、それに合わせて動いたりするんです。
お芝居でも、自分でイメージを作って動いてみるっていうことをわりとやりますね。
監督や演出の方に言われる前に自分で気づけば、ですけど。
で、トライしてみた結果、全然ダメだったっていうことも多々あります(笑)。

3年前に出演した蜷川(幸雄)さんの『ハムレット』でも、覚えてるのは怒られたことばっかりです。
「お前がどういうヤツなのか全部見せろ」って、毎日。
自信がないからどうしても自分以上のものを見せようとしてしまう。
そういう僕の弱点を、ビシビシ指摘されたんです。
それはすごい愛情だと思う。
その愛情のなかで、僕の鎧みたいなものもはがれていったんですよね。
蜷川さん自身が素直な方だから、僕も正直になるしかなかったし(笑)。
結局、蜷川さんが求めてるのは”気持ち”だったんだと思います。
なのに僕は、技術がないことに焦っていて。
あ、気持ちを伝えるにはやっぱり技術が必要だったりするんですけど、でもその前に、まずは素直に気持ちを出すってことが芝居には大事なんだなって気づかされました。
だったら、自分を本質から変えなきゃいけないなっていうことも。

それから、いろんなことやってみましたよ。
初対面の人の前でも、極端に自分の思ったまま動いてみるとか(笑)。
ヘンな人に思われるんじゃないかって、最初はコワかったですけどね。
やっぱり、中学生のときとかに、ひとりだけ目立つのはよくないって刷り込まれちゃってたから。
みんなと同化するのは好きじゃなかったし、自分にしかできないことをやりたいと思ってたんだけど、それでも大変だった。
でも、自分らしく自然体でいたほうが、やっぱり自分自身がラクなんですよね。
自由でいられるというか。
だから、個性があることを恐れちゃいけないんだなって思いました。
俳優としてはなおさら、個性を出すことが大切っていうか。
僕がやってるから観たいって思ってもらえる俳優になるには、ちゃんと自分の武器が何なのかを考えることが大事だなと思いましたね。


今回、『お気に召すまま』で久々に蜷川さんに演出してもらえることになって、僕がいちばんにしなきゃいけないことは、やっぱり、裸になることかなって思います。
自信のないところはまだたくさんあるんですけど、それを隠すんじゃなくて、恥も何もかもぶちまけてしまおうと思うんです。
逆に、「できるようになった」って蜷川さんに言えることも何コかあります。
具体的に言うのは恥ずかしいのでやめときますが(笑)、蜷川さんがいつも「心に怪物を飼え」って言ってて、自分をよーく見てたら、”それってもともと僕のなかにいたんじゃん”みたいな感じのことです。
それはちょっと武器になるかなって思います。

シェイクスピアの話は好きですね。
特にセリフが好き。
言いにくいけど。
で、何百年も前の話だけど、今と変わんないんですよね。
好きだの、嫌いだの、結婚だの、不倫だの、裏切っただの、殺してやるだのって(笑)、人間のなかにあるものがすごくうまく描かれてる。
なかでも『お気に召すまま』は、男からするとよくわからない女性の部分が描かれてるから面白いなって思います。
その女(ロザリンド役)を僕が演じるなんて、どういうことだって感じですけどね(笑)。

でも、心にふっと現れる、好きっていう気持ちだったり寂しいっていう気持ちだったりは、男も女も変わらないだろうなって思うんで、まず気持ちを大事にしたいと思います。
あとは、女らしい表情とか仕草が出ればいいなって。
恋人役のオーランドは小栗(旬)くんなんですけど、あ、旬とキスしたりするのかな。
どうしよう(笑)。
ま、舞台はちゃんと気持ちの流れを作っていけるんで、自然にやれると思いますけど。
なんか、笑っちゃうな。

旬っていうのは、若い俳優さんがいっぱいいるなかで、これからも一緒に仕事できたらいいなと思わせてくれる人です。
で、いつも動いてる人だから、一緒に仕事するには僕も止まっちゃいけないなって、すごく刺激される。
旬のお芝居も大好きですね。
『ハムレット』のフォーティンブラスも、スマートですごくカッコよかった。
僕がやったフォーティンブラスは怖いっていうか、野心みたいなものがあったんですけど、全然違ってましたね。
それは、演出の仕方が違うってことも大きいんだろうけど。

そう思うと、蜷川さんってやっぱりすごいですよね。
同じ作品をどんどん新しいものにしていく。
止まってない。
蜷川さんの舞台を観に行くと、聞こえるんですよ。
ズシズシズシって、上に向かっていく蜷川さんの心臓の響きみたいなものが。
僕もそういうパワーのある人になりたいと思いますね。
自由な心をもって、その心に浮かんだものにはどんどん飛びついていきたい。

今、興味をもってるのは、やっぱり、人、かな。
役者さんもそうだけど、街を歩いてるいろんな人とか。
あと、岩井俊二さん!
最近は、岩井さんが僕のこと知ってくれないかなぁと思いながら生活してる(笑)。
それから、『エレファント・バニッシュ』を演出したサイモン・マクバーニーさん。
僕、村上春樹さんが大好きなんで観に行ったんですけど、かなりきましたね。
ああいう世界観がある舞台を、いつか自分もやってみたい。
で、自分がやりたいなと思うことをやって、それが誰かに届いて何かを感じてもらえたら、それだけで僕はうれしいです。


成宮寛貴と振り返る舞台の仕事

『滅びかけた人類、その愛の本質とは・・・』(2000)/
何もかもが初めて。一生懸命で、夢中で、じつはあまり覚えていません。シーンとかは浮かぶんですが、とにかくいろんなことがあったということだけは、今でもはっきり覚えているんですが。

『ハムレット』(2001)
まず、蜷川(幸雄)さんに出会えたという意味で、とても大切な舞台です。今のままではダメだとわかってるんだけど、どこをめざせばいいのか、精神的に模索している最中に出合った作品で、この舞台をやることで、こういう風にしたいんだって吹っ切れました。体力的に、ここまでできると気づかせてくれたのも蜷川さん。最後のほうでは声が出なくなってしまって、それでも何とかやり終えたことが自信につながりましたし、本当に忘れられません。

『黄昏―On Golden Pond』(2003)
恐れ多くて、お目にかかる機会はまずない俳優、女優の方々―杉浦(直樹)さん、八千草(薫)さん、浅野温子さんたちとご一緒できて、学んだものはたくさんあります。それをどう形にするのかが、目の前にある大きな課題ですね。
 


お取り寄せ


発売日:2004/5、 REPO:2008/4/20
※文章・画像の転載・引用を一切禁じます。



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