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H vol.60

 何度か訊かれていることかもしれないけど、そもそも成宮くんが俳優になろうと思ったきっかけというところから伺ってもいいですか?

「う〜ん・・・・・・はい。もともと母子家庭だったんですけど、中学校を卒業する、中3の時に、母親が死んで」

 中3で?それは、大変ですね。

「そう、結構大変で。で、僕はやりたいこととかその時見あたらなくて。
でも、僕ん中では、高校に行く意味も見あたらなかったんですよ。
外のほうが面白かったし、なんか魅力的、刺激的だったから。
勉強嫌いだし。
”俺は学校じゃなくて外の世界でみんなより一歩早く、自分のやりたいこと見つけてやっちゃおう”とか思ってたんですけど。
でも、実際外に出てみると、なんかね、やりたいことがなくて・・・・・・頭でっかちになっちゃってて。
興味はそこそこあるものがたくさんあったりして、何かチャンスがあっても、これは俺がやるべきなのか・・・・・・もし運命があるんだったら、この仕事じゃないのかもしれない、とかって思って・・・・・・まあ、たぶん失敗とかするのが怖かったからだと思うんですけど。
で、時間がどんどんどんどん過ぎてって、結局”俺の夢?・・・・・・夢ってなんだろう?”みたいな感じになってきちゃって。
中学校の時に、電車乗ってる時に、品川から新宿の公立の学校に通ってたんですけど、電車の行き帰りで、疲れた顔したおじさんたちが乗ってて。
”ああ、俺の未来ってこんなんだろうなあ”とか思って」

 (笑)目標のない自分の未来図に見えたんだ

「そう。”おちおちしてるとこうなっちゃうぞ””よし、なんか絶対やんなきゃ!”って思ってたのにもかかわらず、こう、ぐるぐるぐるぐる同じとこ回っちゃってて、”もう限界、もう何かにそのエネルギーぶつけないと脳味噌溶けまくる!”とかって思ってる時に、たまたま、知り合いの方に”宮本亜門さんの舞台のオーディションがあるけど、おまえ、とりあえずこれやってみたら?”って言われて、行ったんですよ。
したら、オーディション、人数がすごいたくさんいて。
そこから選んでもらって、結構ね、その時のことあんま覚えてないんですよ。
一所懸命やってて、ふっと気付いたら受かってたっていう感じ。
で、稽古始まって。
ずっと毎日毎日毎日やって。
もう楽しくてしょうがなかった!
何か目標があって、それに向かって走ってる感がすごい気持ちよくて。
なんかね、あの・・・・・・生きてる感じがした」

 じゃあ”運命にようやく出会った!”みたいな感じが、その時あったの?

「う〜ん、いや、それは・・・・・・わかんないです。
でも、とりあえず僕の夢・・・・・・なんだろう?夢とも言わないのかな?
”夢は○○さんみたいな○○になることでーす”とかっていうの、まったくないんです。
この、俳優っていう仕事が僕に一番向いている、運命の仕事かどうか、俺が、俺の性格でこの仕事が上手くいくのかっていうのは、まだわからないですね」

 今も?

「うん。でも変えていかなきゃいけないものだと思うんですよ。
俺のまんま、俺の120パーセントが仕事に活かせることなんて絶対ないから。
進化、進化っていうか、直さなきゃいけない」

 それは、自分には直すべき部分、変えていくべき部分がある、って自分で感じてるっていうこと?

「・・・・・・結構、ちっちゃい頃から、大人の中で生活してきたから、大人が喜ぶ答みたいなのを知ってて。
結構、全然思ってもないこと言ったりとかしてたから。
なんか、外皮がすごく固くなっちゃってる、素直にならないところがあるんですよ。
例えば、ほんとに感動したんだったらそういう顔すればいいのに、しなかたりとか、あと、ほんとに悲しい時に一所懸命笑ったりとか。
なんかこう、すごい大変そう、辛そうって、亜門さんにも、蜷川幸雄さんにも言われたし。
”もっとフリーになんなさい””とりあえず一回全部シンプルになれ”って言われて。
今もまだ不安定なんですけど。
無言にならないように喋りつづけなきゃとか(笑)、面白くしなきゃとかって思ったり・・・・・・・・・・・・。
なにしろお母さんの笑う顔が好きで。
お母さん笑わすために嘘ついたりもしてましたからね。
すごいいびつですよね。
面白くデフォルメしたり、おとぎ話を自分で作る、ほんとにそんな感じでした」

 それはすごく健気な子じゃないですか。

「そうですか?ま、でも、うん・・・・・・もうちょっと、自然体でいられるといいのにな、っていうところから始まって。
役者って、プライベートがやっぱし表情にも出るし、引き出しになっていくから。
もうそういうところから自分を今、新しくしていってる、作り変えていってるっていうか。
なんか、自分以上のものを見せようったって無理っていうのはもうわかってきたんで。
結構上手(うわて)ばっかなんですよね、僕の周りにいる大人は。
蜷川さんだったり、(作家の)赤坂真理さんだったりとか。
だから、なんかこう・・・・・・自分以上のものを見せる必要がないから。
ていうかそんなのダメだっていうのを観念して(笑)」

 でも、成宮くんて実際ドラマや作品を見ると非常に役者に向いている、とても役者らしい役者という感じがするんだけど。
成宮くん自身は、例えば今、役者をやっていなくて他の職業をやっている自分って想像つきます?

「何やってんだろう?・・・・・・・・・・・・う〜〜〜〜ん、何やってるかなあ・・・・・・。
洋服屋さんの店員になってて、そのうちスタイリストになってるかもしれない(笑)。
でも、オーディションを受けた頃っていうのは、母親が死んじゃって、自分の屋根が急になくなっちゃた感じがして。
もう現実逃避というか。
弟いるし、好き勝手できない、みたいなところがあって。
焦ってましたね、結構。
なんかこう、早くしっかりしなきゃ、みたいなところあって。
で、弟の前ではもう、すげえいいお兄ちゃんでいたいっていうのがあって。
だから弟の前ではいつもよりこう・・・・・・頑張ってる感じ?(笑)。
今でもちょっとそうなんですけど」

 今は注目もされ人気も出てきて、俳優という仕事から自信が生まれて、自然な、いい状態になってきてるんじゃない?

「そうですね。うん・・・・・・でもなんか、人よりも、役者を目指してる人って、努力ってほんとに限りなくできるし。
上はもう限りなくいっぱいいるし。
追い越したくても、もう死んじゃってて、勝負できない人もたくさんいるし。
なんか、最近は、自分が強くないとやっていけなくなってきてると思う。
やっと僕、人に認識され、スタートに立てたので。
いろんな役をこれからやっていく中で、自分ができないこともたくさん出てくると思うから。
自分がどこまでやっていけるかとか。
変わることを、まずずっと恐れないようにしていたいです。
いつもこう、面白くしてたい。
ぶち壊して、新しくしてくっていう。
そういうふうにしていくことが、俺の変わらないことだっていうふうに、いつか言えるようになっていたいっていうのはある。
それ以外は特にないですね。
どういうふうになっていたいとかはないんですよ。
どういうふうにでもなれるんですよ!」

 いいこと言いますね(笑)。

「ピース!へへへ」



前6ページ(その内、インタビューが丸々1ページ)
写真は全てバックが落ち葉の積もる木々で、7ショット
目の下を黒くしたりしてて、小悪魔的な写真ばかりです。


発売日:2003/4/30、 REPO:2007/7/28
※本記事内の文章・画像等、無断転載禁止


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